きわめて一般的な日常

きわめて一般的な日常を綴っていたはずなのですが、いつのまにかアニメやゲームの話ばかりになっていました

杯中の蛇影

病院のロビーは底冷えがする。
例によって予約という言葉の意味を哲学的に解釈しはじめるほど待たされたのち、その十分の一もの長大な時間を費やしての定期検診*1がようやく終わる。
さあ、帰ろう。こんなところ、長居してもメリットはない。
そう考えながら身支度を整えているところへ、医師が難しい顔をして声をかけてきた。
まさか、なにかよくない症状でも? さすがに不安になるわたしの気持ちを知ってか知らずか、彼は言いにくそうに一瞬言いよどんでから言葉をつないだ。


「なにか困ったことはありませんか?」


‥‥どういうことだろう。頭の中で医師の言葉の意図を必死で探る。だが、答えはでてこない。更新がさっぱりできないとか、アマゾンプライムに加入したのは失敗だったんじゃないかとか、不安なことはいくらでもある。だが、それは医師の関知するところではないし、彼にしてもなんの興味もないだろう。や、そもそも知ってるわけがない。


「言いにくければ、女性のカウンセラーを呼びますよ」


ますますわからない。これは、何が言いたいのかを、はっきり聞いてみるしかないだろう。


聞いてみた。


ははぁ、なるほど。
つまり、検診中にずーっと、手足に無数についた細かい傷が気になっていたわけか。で、DVを疑って心配していたというオチ。


いい先生だなぁ。いい先生だとは思うんですけど、早とちりしすぎですって。
ぜんぶ、猛獣につけられた傷ですよ。凶暴な猫ですよ! こじろですよ!


「そんな、ひどいですか、この傷」
「暴力による擦過傷に見えました」


ある意味、間違ってはいないのか。

*1:冷えと頭痛持ちなだけで、たいしたものじゃないんですが