悪気のない天然な千早の煽りから、校内かるた大会で勝負をすることになった新と太一だったが、実力差は明白に新>>>>>>>>>>>>太一だった。クラスのヒーローに「一枚も取らせずに勝ってみせる」と豪語した新のそれは、言葉に違わぬ本格であったわけだ。
しかし、彼は生来の負けず嫌い。ことに千早と仲のいい新には決して負けたくない。応援に来ている母親のプレッシャーもあるし、たとえどんな手段を用いても勝たなければならない……そう考えた太一は、新のメガネを盗んで隠すという卑劣な手段に出た。
裸眼視力が0.1にも満たない新が、メガネ無しでかるた勝負に勝てるはずもありません。
ことは太一の思惑通りに進んでほどなく勝利を得るはずでした。
しかし、そこに飛び込んだのが『空気の読めないヒロインオブザイヤー』があれば金賞間違いなしの千早です。
「あたし、綿谷くんの代わりに出てもいいですか!?」
いいわけねえだろ。と、先生もつっこみたかったでしょうがそこは教育者、ぐっとこらえて特例で選手交代と相成りました。
vs
一部の札しか覚えてないけど取り合いになれば強い千早
の、好カードがここに実現です。
千早の覚えている札は千早が取り、そうでない札は太一が取……ったり、競技ルールの乱暴な運用で千早がムリヤリに札をもぎ取ったりで、あと一枚取れば千早の勝ちの状態になりました。
ですが、残された札の中に千早が覚えていたア行とナ行の札は一枚もなし。
札が少ないと件の強引作戦も使いにくい。
さすがにこれは絶望か? と思われたそのとき、とある一枚の札に千早は気づきます。
これは、そう、新のアパートで知った一枚。
上の句は……ちはやふる!
勝者:綾瀬千早
△▼△
さて、今回の太一の愚行は、親の過剰な“期待”が、子供をゆがめる好例を見た、という感じです。
負けてこそ成長する、負けなければ成長できない部分は間違いなくあるのに、それが許されない。不完全なままの成長を強いられ、勝つためなら何をやっても正当化されるとすり込まれ、それが通る子供社会でならまだよし、だがそこから出る日がきたらどうなるのか。
多くの人が思っているほどには、大人社会は『勝てばいい』ようにはできていません。むしろ子供社会よりよほど過程が重要視される世界だとわたしは思っています。
そんなところに、卑怯な手で勝つことを当然とした子供が出て行けば……まあ、アレですね。
だけど。
太一は確かに、やっちゃいけないことをしたけど。
それを恥じて謝る勇気があった。面と向かって自分の卑怯さを告白して罵りを受ける覚悟を見せた。
わたしは、彼がやったいじめを責める以上に、この行為を褒めたい、そう思いました。
彼はゆがんではいない。まだ大丈夫。
ただ、好きな女の子が他の男の子の味方をするのがおもしろくなかっただけ。
なんだと思う。
「正々堂々とやって負けてカッコ悪いことあるかぁ!!」
そう叫んだまっすぐな千早に向き合うのに、いまの自分じゃ恥ずかしいと思えるプライドがあったんだと思う。
△▼△
ん。今回も上手いこと違和感なく端折ってたと思います。
何をやらかすかわからないハラハラで不安定なアニメもいいけれど、この作品のように安心して見ていられる存在もまたいいですよねぇ。
では、また。