“お酒ではあり得ない”謎の液体に翻弄された若人達の阿鼻叫喚の中、霧島海人一世一代の告白は不発に終わった。玉砕もできないまま、言えずに終わった。
翌朝、気まずさと恥ずかしさからイチカと顔をあわせることを避けた海人は学校をサボってしまうが、イチカはそれを自分の正体が宇宙人だとバレて恐れられているせいだと勘違いをする。


愛の告白をしようとしていた海人と、彼が自分の正体を指摘しようとしているのだと思い、遮ったイチカ。


話がまるでかみ合わないまま、青春は決して立ち止まってはくれない。


あ、そういうのに疎そうに見えたイチカ先輩も、自分が男の子に惚れられてる気配くらいは気づくんだ。
……って、気づいてなかったのか!!


というお話。
なるほど。それで『言わないでお願い』だったわけですね。


でもねぇ、けっこうお似合いだと思うんですよね。イチカ先輩ってば海人といい勝負の妄想体質じゃないの。
ほら、縁側で二人仲良く妄想に浸っているとか……いやなカップルだな。


ま、それにしてもさ。思い人が自分ではない誰かに懸想しているのを応援するのは切ないよねぇ。そんな彼をさらに外から見つめているのは、輪をかけてつらいよね。かわいそうすぎるもの。彼も、わたしも。
人の恋路をじゃますると馬に蹴られるって言うよね。自分で自分の恋路を邪魔していたら、それは自分で自分を蹴り飛ばすことになるのかな。さぞかし痛いことだろう、ってね。そんな上手い言い回ししてたよね。



がんばれよってニコニコしながら、何ごともなかったように静かに彼女を見守る彼と、彼をひっそりと見つめるわたし。そんな二人の気持ちに気づきもしないまま、彼ではない彼を見つめる彼女。
憎らしいよね、ぜったい。かけがえのない親友である彼女だけれど、それと同時に恋敵でもあるんだよ。それも、一方的な恋敵だよ。
最初から負けてる。あの子は自分という“ライバル”の存在にすら気づいていない。眼中にない。なにしろ彼のことすら眼中にない。憎いよね。大切な友達であればあるほど、逆に殺してやりたくなるよね。そんなのおくびにも出せるはずないけれど。


だけど、彼女の見つめる彼ではない彼もまた、彼女ではない彼女を見つめているのです。
彼女ではない彼女は、彼ではない彼の気持ちに、いささかも気づいていなかいのでした。


あるいはそのままだったら、よかったのに。




△▼△




多少鈍いところはあれど、宇宙人の少女のメンタルも地球人のそれと大差はないようですね。普通に惚れて惚れられて恥ずかしかったりつらかったり、星の違いは男女の違いほどにかけ離れてはいなかった、と、そういうことでしょうか。


さてさて、けっこー地雷体質らしいイチカ先輩は、海人の抱く自分への気持ちを知って、これからどうするのか。
ていうか、海人くんぜったいアレだよね。美人にちょっと優しくしてもらったもんで舞い上がって暴走してる状態……。一目惚れしたわけでもないしね。


若いっていいなぁ。
いやわたしも若いんだけどさ。


そんなところで、来週に続く。
また。