きわめて一般的な日常

きわめて一般的な日常を綴っていたはずなのですが、いつのまにかアニメやゲームの話ばかりになっていました

夏雪ランデブー 第03回


六花が病に倒れたことで、亮介と篤の間でのお互いの認識に決着がついたかに見えた。
彼女の危機に駆けつけて力になることのできる生者の亮介、彼女を“見守る”事以外なにもできない死者の篤。
半ば勝ち誇り大胆さを増して六花にせまる亮介に、篤は手も足も出ずただ見ていることしかできない……はずだった。


♪ちゃららっちゃっちゃちゃー


篤はポルターガイスト現象を覚えた。


今更説明の必要もない有名な用語でしょうが、ポルターガイストとは『騒がしい幽霊』を意味するドイツ語です。
家鳴りがしたり、家具が宙を舞ったりの迷惑な現象を総称するもので、死霊の仕業とも生者のエクトプラズムの力とも言われるこの現象。まあ、それはいまどちらでもよろしい。
重要なのは、やられっぱなしで対抗手段のなかった篤に、亮介を傷つける力が備わってしまったというところです。


見たところ、彼は相当の悪霊です。オカルト歴20年のわたしが言うんだから間違いない。
妄執に取り憑かれて物の道理も事の善悪も判断ができず、ただ一つの『妻を手放したくない』目的のために“生き”続ける哀れな残留思念。それが、いまの島尾篤です。


病気になったのはあんたのせいじゃないけど、店長が次へいけないのは確実にあんたのせいだ。譲れよ、いいかげん俺に


亮介くん優しいですよね。ここまでじゃまされても嫌がらせを受けても、まだ篤を気遣ってる。
ねえ、こんな彼になら奥さんを任せてもだいじょうぶですよ。うん、ぜったい。



……ただまあ、篤の立場になってみれば、そんな簡単な話じゃないですよね。
生前の彼はもっとあっさりしていたそうですし、自分の死後は他の男と六花が幸せになるようにとも言っていたそうです。これ、口先だけではなく本心から思っていたんじゃないかなぁ。だってまさか、自分が死霊として彼女の前にとどまることになるなんて思わないじゃないですか。
自分はこの世界から消える。彼女との関わりも一切なくなる。だからこそ言えたことで、思えたことなんじゃないでしょうかね。


その上、彼女を見て過ごせるだけで幸せだったのに、満足だったのに。ただ一つの“生きがい”すら奪われるかもしれないとなれば、人を傷つける手段まで手に入れてしまい、もはや怨霊の域に達してきた彼としては、存在の全否定にも等しい許しがたい所行に対して、生死に関わる実力行使もためらわなくなるのではないか、と。



なにせ、自宅の寝室で奥さんが余所の男に組みしだかれているのを目の当たりにしているわけですよね。むしろ、奥さん方が積極的だったりしているわけですよね。たぶんこれ、強烈にきついんでしょうね、相手の浮気を知ったときって、男性の方がずっとダメージを受けるそうですし。
もちろんこれは一方的な視点での見方であって、客観的に見れば六花は篤を裏切ったりしていないんです。それどころか夫のなくなったあとから今日に至るまでずっと操を守ってきた身持ちの堅い女性なんですよ。でも、それは理屈ですからね。篤にとっては納得が難しい……かも。


ま、なんにせよ、気持ちはわかるけど、ってレベルの話ですよね。
同情はするけど同意はできないという。
どちらの味方になるかと問われれば、悩むことなく亮介くんです。


さあて、篤は亮介の体を乗っ取ろうと目論見始めましたよ。
対象が意識を失えば体を奪えてしまうらしいです。ということは、亮介が六花と懇ろになって朝までぐっすり、なんてことになれば……体を乗っ取って首つりさせるとかあり得るな!!


けっこーやばい精神状態ですもんね。


そんなわけで、また来週。