ずっと引きずっていた思い出のカタチを自ら処分したことが引き金になったものか、体調を崩して始業式を病欠していた和奏の家に、来夏がお見舞いにやってきてくれた。気持ちが弱っていた和奏は、来夏と話す内に、ついつい普段では決して口にすることの無い、亡き母への恨み言を思わずこぼしてしまう。


「かなわなかった約束だからこそ、大切な思い出になる」


薄く優しくほほえみかけてくる来夏の言葉に、和奏は、なにかが繋がった気がした。



口に出さなければ気づけないことだった。捨て去らなければわからないことだった。


ようやく父に苦しかった自分の気持ちを吐露することができた和奏は、そこで母の自分への思いを改めて知った。
あるいはそれは最初から全部わかっていたことなのだろう。目をそらさずにはいられなかっただけなのだろう。


気づくのが遅かった。だって、母の残したものはぜんぶ捨ててしまったんだもの。
ピアノも、手作りのマスコットも、そして、音楽も。
ごめんなさいお母さん。


だが。


ピアノもマスコットも取ってあるよ


よっしゃそうだ、やっぱり捨ててなかったよね! いいぞ父!!


部屋にピアノは戻った。マスコットもこの手の中にある。
音楽は……捨てるとか捨てないとかじゃないもの。常に一緒にあるものだものね。





△▼△



その他の部分。



よかったねぇ、お父さん。
ずっとずっと苦しかっただろうね、たぶん、実は和奏よりも苦しかったんだと思う。娘にすべて話したいって思い続けていたよね。思わず怒鳴りつけてやりたくなったことだって何度もあったと思うよ。それでも、気弱な笑みを浮かべながら、娘の傷が自然に癒えるのをずっと待ち続けていたんだよね。
先週のお話を見て言ったように、外野から客観的に見れば、両親のやり方は決してうまいものじゃなかったとわたしは思う。それは今週分を見てもかわってない。だけど、娘を思う夫婦の愛の強さは、先週よりずっと強く伝わってきたよ。


あえて自分と二人でお見舞いに行かず、来夏だけを向かわせる紗羽マジイケメン!
なんていいますかねえ、結果的にはいい影響を和奏に与えたわけでもあるし、最高にいい仕事をしたのは間違いない。
ないんだけど、この自信はどこから来るんですかね。
何を言っているかといえば、つまりはほら、一番の親友をね、最近急速に仲良くなっているもう一人の友達に単独で会いに行かせる自信。
ぶっちゃけ言えば、友達を取られるんじゃないかという不安? そういうのぜんぜんないっぽいのね。
わたし、そのへん実に女々しいからなぁ。こういうイケメン女子にはあこがれます、うん。





ああ、そういえば、びしょ濡れになってノーブラで帰った来夏の話。
下着の貸し借りってまずしないからね。まあ、ブラはサイズの問題もあるだろうけど……問題は、下だよ。
実はノーパンだったり!? パンツなんかもっと貸さないもんね!
いや、場合によってはパンツの替えを持ち歩くこともあるか。どんな場合かいちいち言わないけれど。


熱心に黙黙とまじめにボイストレーニングを続けている男子勢は、そろそろ来週あたりからメインになっていくかな? いまのところはなんとも、その他大勢なんだよね。大智の試合にしてもさらっと流されて終わりだったし、ウィーンは未だに正体が不明すぎるしね。
そうそう、レンジ食パンは大笑いさせていただきました。お父さんの期待に満ちた表情とのギャップがまぁ!


さて。
遠回りしちゃったけど、届いた。器用なやり方じゃなかったと想うけれど、それでも母から娘へと、正しく心は伝わった。
そんな、いいお話でした。来週にも期待します。では。