記念すべき菜々生の神様初仕事! は、支配地の中にある沼の主であり先代の土地神<ミカゲ>と懇意にしていた、沼皇女<ぬまのひめみこ>からの恋の悩みを解決することだった。しかし話を聞くと、彼女の思い人はなんと人間の少年だ。妖怪と人との恋愛は重大なタブー……神使の巴衛は沼皇女にあきらめるようにと狐だけにこんこんと*1諭すのだが、土地神である前に恋バナ大好きな女子高生の菜々生は、種族の差すらがロマンチックな障害の一つとしか考えない。
哀しいかな、主人の命とあらば決して逆らえないのが神使であると菜々生バレしてしまった巴衛に、抗するすべはまったくない。二人は手始めに、恋のお相手である裏嶋小太郎<うらしま こたろう>を探すことに。



人の姿形をとってはいるものの、沼皇女はナマズの化身です。素顔はいわゆる魚顔で、人間の美的感覚からすると、お世辞にも美人とは言えない顔をしています。
しかし! 女は顔じゃない! ていうか自分が顔で勝っている女の恋愛ほど応援したいと思うのが女。皮肉なことにこんなことやってるせいで自分が売れ残ったりするおばかさんなのも女。
この恋、成就させてやろうじゃない!


そして、まず動くのが菜々生なのです。
よくね、言われるでしょう。「口より手を動かせ」って。これは要はうじうじ考えてるヒマがあったらやることやれって意味なんですけど、これに対して一部のひねくれた元々の意味で中二病若い気質の人たちが言うんです。「考えないで動いたら失敗するだけだ」ってね。


誰もそんなこと言ってねえって。


考えろよ。だけど考えてるだけじゃなくて動けよ。そういうことなのに。同じことをうじうじしてるより、まずできることやれってことなのに。
ねえ。


で、まず動く。裏嶋小太郎を探す。二人を引き合わせる。なんかいい雰囲気!


こうなるわけですよ。
くっだらない駆け引きとか作戦とか考えてるより、ずっといいじゃないですか。シンプルなものほど壊れにくいんです。くみ上げやすいんです。
わたし感服つかまつりましたわってなもんです。


なによりね、この先ですよ。
二人のデートの最中に、沼皇女がたちの悪い二人組の男に絡まれるんです。覗いている巴衛が介入すればそんなやつらは秒殺です。最悪、いざとなれば、沼皇女が人間の少女の姿を保つために抑えている魔力を解放しても同様でしょう。


し・か・し



それはどちらも、違う。
絡んできているのが人間である以上、ここは人間の裏嶋小太郎が始末をつけなければならないんです。
もともとは沼皇女の願いでかなった逢瀬だけれど、土地神が護るものは本来そこに住む人間です。そして護るとは、ただ外敵からの壁となって対象に災いが及ばないようにするだけではないのです。気が弱くけんかなんてしたこともないであろう少年が、目の前にいる女の子を守るために一歩足を踏み出す勇気を後押しすることもまた、人が人であるためにとっても大切な、神の守護なのでしょう。


苦しい時の神頼みって、人事を尽くして天命を待ってこそ、意味があると思うんですね。
いろんな神話をひもといてみても、神様ってそのほとんどが人間の数百倍は性格悪いです。人間だってまじめにやってない人を助けようって気にならないのが普通なんですから、神様であればそれはなおさら、だと思うんですよね〜。


うん、割と無宗教の日本にこそ多いよ。神が無償の愛を誰にでも等しく注ぐ“べき”存在だとか思ってる人。


ぜったいちがうよなーと、そうも思うんです。


そんなわけで、今週も脱線しまくりのまま終わります。
脱線ついでに、わたしは本作で好きな部分の一つに、菜々生ちゃんの服がありますねぇ。
なんかこう、マンガ・アニメ補正がかかっているのを差し引かなくても、比較的ふつーのセンスというか、そんなん感じるのですわ。


では。

*1:ごめんなさい……