みんなが美魚を忘れていく。いや、むしろ最初から彼女がそこにいなかったかのような世界が構築されていく。何かがおかしい。理樹は、今日も病欠しているらしい彼女の空席を見つめながら、焦燥感に駆られていた。
しかし、その心配は杞憂だった。美魚は忘れ去られるどころか、誰からも愛される明るく楽しい少女として、クラスに溶け込んでいるではないか。
── 理樹以外にはそう見えていた。
美魚が、いや美魚に似た誰かが校庭に傘も差さずに立っていた。
彼女の名前は美鳥。美魚が失った影が人の姿を取ったものだという。
彼女が現れてからなにかおかしい。
ちがう、みんなが美魚のことを忘れていく。
そう、まるで西園美魚という少女など最初からいなかったかのように。
えいえんはあるよ……美魚はこの世界から姿を消した。
目が覚めると何も覚えていなかった。
自分はなぜ海にいたのか、それさえも。
それでも喪失感だけは残る。いない。誰かがいなくなった
そんなとき、見覚えのない一冊の本が自分の荷物の中に混じっていることに気がつく。
これは美魚の本。
思い出した!? すべてを思い出したぞ。
「わたしのことはいいから、この本の、この歌を覚えていてほしい。そうしてくれれば、こんな自分にも生まれた意味があったと思えるから」
美魚は消える前に愛読書の若山牧水の歌集を理樹に託していた。
それを見て、理樹だけは思い出したのだ。
何色にも染まらない、何者にも交わらない
強い存在になりたかった少女のことを。
美魚はどこだ。どこにいった? え? いるの?
こいつぜってー美鳥だろ!!
理樹に看破されるも、美鳥はまるで慌てない。
勝利を確信したように、勝ち誇った笑みを美魚と同じ顔に浮かべるのみ。
どうすれば、美魚を取り戻せるのだ?
理樹はなすすべもなく立ち尽くすのみ。
△▼△
さて、この“美魚ルート”なんですけどね……アニメでどう片をつけるつもりなのか、気になりますね。
これってつまりは、超常現象シナリオですよね。他の日常系*1は普通の話に混ぜ込んでいてもさほど問題は起きないとは思う一方で、こういう話はどうまとめるのかなぁ、と。
ほら、原作はゲームですから、各ヒロインルートの結末は個別のエンディングに向かうわけなんですよ。だから、その後は話がリセットされるわけで、どんな突拍子のない話を入れてもどうとでもなるんですよね。
はてさて。アレかなぁ。
それはそれで、不思議な話もあったもんだねえ、で、何事もなかったように続けるのかな。
そこはやろうと思えば簡単だとは思うんです。ただ、原作ファンからするとやっぱり心配なんですよね。
ていうか、これ……ああ、ネタバレになるから言わないですけど、既にアレ? という点もあるんです、はい。いや、うん。
そんな、愛しさと切なさと心強さでいっぱいに、今年もリトルバスターズを応援しています。
では、また。
*1:小毬ルートとか