今回のタツミの指導役はシェーレ。凄腕揃いのナイトレイドの中でも際だって殺傷能力に長けた彼女だが、昼日中に一見しただけでは単なるのんびり屋の優しいお姉さんにしか見えない。仕事以外の時は、ほんわかとした雰囲気を放つ癒やし系の天然美女なのだ。
しかし、そんなのほほんとした空気はいつまでも続かない。帝都を留守にしている最強と謳われる女将軍が、ナイトレイドに対抗するために戻ってくると言う。
数ある犯罪の中でも『殺人』というものだけは別格です。
「他はなんだってやるが殺人だけはやらない」
そんな犯罪者の方々は世間にごろごろしています。
殺人を怖がる理由は大きく分けて二つです。
一つ目は『捕まるのが怖い』から。
とってもわかりやすいですよね。
警察に捕まって裁判にかけられて、ことによれば死刑判決を受けて自分が殺されてしまう。
これは怖い。
そして二つ目は『殺人そのものが怖い』ですか。
死に逝く者の断末魔の叫び、大量に噴き出す血の匂い、裂ける肉の赤の鮮やかさ、その手に伝わってくる砕ける骨の感触。
聴覚・嗅覚・視覚・触覚。五感のうちの4つ*1をも同時に激しく揺さぶる凄惨な光景。
これらは、先天的に持っている命が消えることへの本能的な恐怖に直結するのでしょう。
また、後天的に特に強く学習しているはずの『命の尊重』に逆らうことでもあります。
とはいえ、そんな“後付けの”倫理観など、戦争中に代表される極端に緊張状態を強いられるケースでは、誰もが簡単に箍が外れてしまうことはありえます。そうでなければ生き残れないからなのでしょう。
本来はそのように例外中の例外のことであるはず。
あってほしいことであるはず、なのに。
実は、なにもない平和な世の中でも、殺人への恐怖を感じない人がいるんです。換言すれば、ためらうことなく平然と人を殺せる人間が、そうでない人たちに混じって一定数存在しているんです*2。
シェーレは、そういう生粋の殺人者の一人、ということなのですね。
恐れがなければ体も固まらない。
体が固まらなければそれだけ生き延びる確率が上がる。
特に殺しの訓練を受けたわけでもなかった彼女が、最初の修羅場を生き延びることができたのは、そんな道理、なんでしょうねえ。
△▼△
例によって長々ととりとめの無いことを書き連ねてしまいましたが、今回は誰一人死人が出ない貴重な癒やし回だったじゃないですか。
そうなれば自然と書くことも限られてくると言うわけですよ。
ときに、タツミの……なんていうんですかね、帝具で仲間を生き返らせるとか、そういう発想。すごいですよね。
ここまであきらめの悪く女々しい主人公って、めったにいないですよね。
腹の立つくらいに自然な普通の少年っぽくて、わたし、キライじゃないです。
そうよね、そんな簡単に割り切れますか、ってね。
というわけで、また来週。