戸惑いも無くそう言い切れる彼女の心にともる炎は、虚無か、あるいは諦観か。
キュウベエは、この期に及んでまだ臆面も無く魔法少女に接触を試みる
魔法少女は、ここに至ってもまだキュウベエの言葉を信じようとする。
ボクの知る限りでは無いね(そんなことできるわけがない)
魔法少女が何を成し遂げたとしても驚くには値しない(できるわけないけどね)
前例は無いね(できないから前例が無いんだよ)
だからボクにも方法はわからない(誰にもわからないよ。できないんだもん)
助言のしようが無いよ(不可能なことの助言は不可能だね)
相変わらずの詐欺師トークは冴え渡る。
彼らインキュベーターがねらう思春期の少女は、どこまでも純粋で、そして愚かだ。
悪魔たちが住む宇宙の際限ないエントロピー増大を抑えるには、そんな少女たちの強い感情の力が必要だという。
いまも、そう言外に、キュウベエは杏子をそそのかしている。
もちろん本心は全く逆だ。可能性なんて絶対に無い。だからやりなよ。ボクの目的のために。
そうやって、一縷の望みに必死にすがる少女をあざ笑っている。
少女たちに夢を見させ、そしてそれを叩きつぶすことによって生まれる力……うっわ、反吐が出そう。
それを無表情で淡々とこなすんだから、ある意味夢魔よりたちが悪い。
そう、あくまで“無表情で”だ。
キュウベエは自分たちの種族は感情が無いと言う。
ウソだ。
この悪魔は“か弱い生き物”を騙し利用し絶望に追い込んでから死をもたらす行為を、心から楽しんでいる。
あるよ、感情。
むかつくほどに。
そして、また一人の少女がありもしない希望を抱かされ散っていった。
せめてもの救いは、杏子がかつて抱いていた正義の魔法少女の心を取り戻したこと。同じ思いで魔法少女になったさやかとともに、逝けたこと、だろうか。
……なにが救いだ。悪魔に踊らされたかわいそうな少女にすぎないのに。
すべてはキュウベエの描いた絵図面の通りに。
残された魔法少女はほむらただ一人。
近く訪れる「ワルプルギスの夜」からこの街を救うためには、まどかが魔法少女になるしか無い。
さて、来週はどうなりますか。
楽しみに待っていましょう。