きわめて一般的な日常

きわめて一般的な日常を綴っていたはずなのですが、いつのまにかアニメやゲームの話ばかりになっていました

猫神やおよろず 第04回『思い出ハレーションサマー』


それは今夜も熱帯夜となりそうな真夏のとある暑い日のこと。八百万堂に柚子の父の牧太郎を訪ねてきたのは、齢三千年を重ねた聖獣・貘の『枕木夕楽々(まくらぎゆらら)』だった。自分にちっとも気づかずに店で接客を続ける柚子を尻目に、勝手知ったる他人の家とばかりに牧太郎を探して家の中をうろつきだした夕楽々は、いぎたなく転がっている繭を見つけ、退屈と空腹しのぎにと彼女の夢へ潜り込むのだった……。


夕楽々は、未だ柚子の父がすでに故人であることを知らない。



貘はおそらく日本人ならほとんどの人が知っている有名な妖怪でしょう。本作のように聖獣とされることもあるでしょうし、神様となることもありますが、悪夢を喰う動物としての認識は共通しているものではないでしょうか。
そういえば、初夢をいいものにするために『貘の札』と呼ばれる貘を描いたものを枕の下に敷いて寝る習慣も昔はあったそうです。覚えているいないの違いはあっても、人間は眠ればほぼ毎回確実に夢を見るます。それに絡んだ超常の存在は昔から身近に考えられていた事の現れなんでしょうね。




夕楽々は『食う、寝る、遊ぶ』のみに特化された狭量な繭の夢に『夢』ならではの情熱や貪欲さや想像力がまるで欠如しているとだめ出しをした上に容赦なく攻撃をしかけます。せっかくの夢なんだから、夢でしかできないことをしてみせろといったところでしょうか。人間ならともかく神様なんだしね!



例によって余談を一つ。
明晰夢ってご存じですか。『これは夢だ』って自覚してみている夢です。
わたしはそれ覚えている限りたった一回だけ見たんですよね。アレはおもしろかったなぁ。
あれは幼稚園か小学校に上がったかのころですね、あまりに印象が強くていまでも忘れません。夜にどこかの大きな駅前でパジャマのまま一人で立っているんです。周りを行き交う大人達はわたしに一瞥をくれることもなくどこまでも心細かった。そんなときふと気づいたんです。『こんなもの現実のわけがない』強く目を閉じて再び開くと、そこは別の場所でした。昼間の、山のてっぺんのような開けた自然の中。また閉じる、開く。そのたびに違った場所に立っていました。何度目かに目を開いたときは、見慣れた天井が眼前に広がっていたのをいまでも忘れられませんね。わたしは現実へ戻ってきた!! 当時は小さな子供ですし、そんなイタいことを考えもしませんでしたけどね。いま思えばそんなノリだったのかも。興奮してたなぁ、たぶん。


さて。戻る。



繭は仕返しのために夕楽々を追いかけて彼女が入り込んだ柚子の夢の中に飛び込みました。
その夢の内容は……柚子が何度も見る悪夢だと繭に語っていたもの。二度と思い出したくないであろう父と母が亡くなった日の夢。そこで夕楽々は、ようやく牧太郎がもうこの世の人ではないことを知るのです。



お前は他人の不幸を見物するためにここにいるのか?
こんな悪夢は今すぐ止めろ。貘ならこの悪夢を喰ってみせろ


両の目に涙をたたえて夕楽々に食って掛かる繭に、夕楽々はただ静かに話しかけるのみです。


人は夢を何のために見るのか。楽しいことも悲しいことも、すべてを思い出の結晶として、これからの自分を作っていく経験として整理していくための場が夢。つらいことだけ、いやなことだけを消したら、それは自分の経験ではなくなってしまう。



きっと神である繭にもそれはわかることなんでしょう。でも、一般論として納得するのとかけがえのない友人の話をあきらめるのとは話が違います。彼女は力なく「役立たずめ」と毒づいて、つかんでいた夕楽々の襟元から手を離すのです。




かつて幼い柚子が受けた一本の電話。
いまでも夢で繰り返し経験するそれは、両親の死を自分に伝えてくる忌むべきものだった。


それが、今回の電話だけは、そうじゃなかった。電話の相手はたしかに愛しく懐かしい父だった。その声は柚子が忘れていた幸せな記憶を呼び覚ました。生前の父からの最後のプレゼント。どうしてそんな大事なもののことを忘れていたのだろう。


時の流れは何よりも優しく、そして同時に残酷です。
悲しい思い出も時間と共に癒やされていくし、幸せな思いもいつか過去のものになっていく。


夕楽々は言います。



悪夢を食べるとは悲しい夢を消してしまうことではないんじゃよ。一人ではもてあますようなつらい記憶が、優しい思い出に変わるのをほんの少し手助けをすることなのさ


その優しく残酷な『』こそが、貘の本質なのかもしれません。




いま、柚子が思い出したのは、いままでずっと忘れていたのは、きっといまが思い出すべき時だったから。そうなんだと思います。


柚子はもうこの悪夢にうなされることはなくなるのでしょうか。それはわかりません。でも、それがどちらだったとしても、彼女はきっと悲しい思い出が優しい思い出に連なることを知りました。一回り大きくなりました。もう、だいじょうぶなんでしょう、たぶん。




さて……来週はなんか水着回っぽいですね! いやぁ夏だもんね。とーぜんやるよね!
お気楽にぱーっといけそうでいいですよね。うん、楽しみ。




あ、そうそう。今回ちょっとおもしろいと思ったんですけど、これって原作だと真冬のお話なんですよね。
季節感ガン無視がデフォの深夜アニメにしては気の利いたアレンジだなぁ、なんて思ったりしました。
桜神の話とか季節が固定されてるのはどうにもならないんでしょうけどね。


まあ、次回が水着回だし、さすがに真冬は難しいと思っただけかも?


では。