喜翆荘最後の日は刻一刻と近づいてきていた。
みなそれぞれに今後の身の振り方について思案を続けているけれど、時の流れは決して人に合わせて待ってくれることはない。遠からず決断しなければ。誰もがそう思っているのだろう。
そんなとき、以前にお金をだまし取っていった映画プロデューサーを探すために崇子が上京するという。スイは緒花に、ちょうどいい機会だから一緒に東京へ連れて行ってもらって、母とこれからのことを相談してくるようにと促してきた。
できたてほやほやの、義理の叔母と姪の呉越同舟である。とってもビミョーな空気。
そして緒花は、ムリに作り上げた“片思い”の相手と出会う。
イマイチどうにも孝ちゃんのしたいことがわかんないなぁ。ただ緒花ちゃんの気持ちが自分に向くのを待ってるってことでいいの? しかも遠距離でお互い顔を合せることもない上にメールのやりとりまで絶えてるのに?
なんかそれって、白馬の王子様をただ座して待つ夢見る少女と同じなんじゃ……。
『信じてる』と言えば聞こえはいいんだけど、その言葉にすべてを任せて他に何もせずに成就するものなんて、恋愛に限らずただの一つもないよね。緒花ちゃんが欲しいなら今すぐ行動に移す。待つなら告知した上で期限を切る。それもできなければ最後の妥協としてせめて連絡は絶やさないようにしなきゃ、なんにも始まらないし終わらないでしょ。
いやまあ、ダメだとわかった上で引っ張っちゃうことは当然あるけれど、それはもうあきらめだよね。
『待つのも男のつとめ』って豆爺の言ったことは、崇子からの吉報を待つ縁には当てはまっても、孝ちゃんのそれはぜんぜん違うからね。
縁と崇子の間には繋がりがあるけど、孝ちゃんと緒花ちゃんにはそれがない*1。
運命というものがあるとしたら、それは偶然を必然に変えることのできる力だと思うんです。
そして、孝ちゃんは緒花ちゃんと偶然の再会を果たしました。
いいか孝一! ここで決めろ! 決められなきゃ偶然は偶然のままだぞ!
前にも言ったけど、孝ちゃんのような子は緒花ちゃんには向いてないと思うんです。だから、向いてないのに好きになったなら、いつもの自分のままじゃダメなんです。自分を変える勢いで、できなかったことに挑戦しなきゃ。言えなかったことを言わなきゃ。そしたらきっと、向き不向きなんて笑い飛ばせるような恋人同士になれるかもしれない。
なれないかもしれない。
まあ、それはまた別の、あとのお話と。いまはいまできることだよね。
がんばれ孝ちゃん。別に肉食系*2になる必要なんかない。草食系の枠から足を一歩踏み出せばいいだけなんだよ。
そんな感じ。
もうほかどうでもいいと思うほどに今回は若く初々しい二人が気になってしかたなかったのでありました。
ふう、プロデューサーさんは捕まったけどお金は戻るのかな。いや、どうせ借金の返済に使っちゃっただろうし、訴えようが何をしようがない袖は振れないからね。どうなることやらです。
では、また来週。