確定した過去を変えずに結果を変えろ!


鳳凰院凶真(33)の檄に応えて鳳凰院凶真(18)が動く。
シュタインズゲートとは、世界を改変する力を持つ『観測者』を欺くことによって開かれる門なのか。


果たして、世界の構造は一変する。



この世界における『確定した過去』とは『牧瀬紅莉栖の死』ではない。
自らの血にまみれた牧瀬紅莉栖の死体を岡部倫太郎が目撃する』こういうことだ。


いや、まだこれでも正解じゃない。


『血の海で横たわる牧瀬紅莉栖を目撃した岡部倫太郎が彼女は死んでいると思った』確定しているのは実はそこだけ。だからこそ、つけ込む余地がある。


牧瀬紅莉栖は真っ赤な泉の中でうつぶせに横たわっていればそれでいい。
彼女が死んでいる必要はまったくないのだ。



そして岡部は、紅莉栖をスタンガンで気絶させた上でサイリュームの赤い液体を用いて死を演出しようと考えた。しかし運命はどこまでも彼の前にはだかろうとする。ラボに長く放置されていたそれはもう凝固していて血に見せかけるための道具には使えない状態だった。ぶっつけ本番で臨んで締まったつけが回ってきた。タイムマシンがあるから何度でも……それはできない。鈴羽によれば燃料の問題でこれが最初で最後のチャンスとなってしまう。


決断するしかない。そう、自らの血であがなおうではないか。
牧瀬紅莉栖の、そして皆が笑って過ごせる未来を掴むために。




役目に酔うことでこそ成し遂げられる偉業。中二病の強さはここに尽きると思う。
自分の腹を割いて出た血をサイリュームのかわりにしようなど!
実際はナイフで刺されたら激痛で動けないよ。でも物語の主人公たちはみんなその程度じゃへこたれない。なら自分だってやれるさ! やってやる! 
普通にかっこいいヒーローなら選択するとは思えない手段。自分をヒーローだと思い込んでいるイタい青年だからこそ選べた冴えたやり方。




岡部倫太郎にしかできなかった、岡部倫太郎だからこそそうするしかなかった


紅莉栖を見捨ててしまった。自分のこの手で刺し殺してしまった、そんな“過去”への負い目もあったんだと思う。自分を痛めつけても当然だと思ったこともあったんだと思う。


そう、これでも、チャラだよ。
おあいこだ。死ぬほど痛かった。紅莉栖もそうだったように。



△▼△




一仕事を終えて病院を抜け出した岡部は、ラボメンピンバッヂを配って秋葉原を歩き回ります。ルカ子に、フェイリスに、萌郁に……この世界ではおそらくラボで関わることのないであろう皆に。まだ見ぬ鈴羽に、
まゆりに、ダルに。そして。




だから! クリスティーナでも助手でもないと言っとろうが!!


誰よりも愛する特別な少女に。


リーディングシュタイナーの能力は誰しもが多かれ少なかれ自然に持っているもの。
今まで岡部と紅莉栖が過ごしてきた短くも濃密な三週間の出来事は、無かったことになんてなっていないんだね。


もしかしたら、明日にはケンカ別れして一生会わなくなってしまう二人かもしれない。
SERNとは関係なく明日には事故で死に別れてしまう二人かもしれない。
でも、本来人生はそういうものなんだ。今日を、いまを、精一杯生きていくだけなんだ。


岡部は、誰よりもそれを知っている男なんだろう。



△▼△


余談ですが、岡部にとって世界の平和も未来の幸福もどうでもいいと思っている片鱗は、原作ゲームにおける同様のシーンを見ることで垣間見ることができます。



この世界でも(おそらく)ラウンダーはラウンダーなんですね。Mr.ブラウンも、萌郁も*1、SERNの手先となってIBN5100を探しているし、そもそもSERNの人体実験は岡部たちの研究とは無関係に行われていたことだからこの世界線でも継続されていることでしょう。
だけど、そんなのはどうでもいい。好きにやれば良い。彼はそう言っていました。彼にとってはあくまでもまゆりや紅莉栖や、身近な手の届く数人に累が及ばなければそれでいいわけです。命がけで世界のために戦おうなんて本気で思えるほどには中二病ではないわけなんですね。


どこまでも普通の友達思いで、ちょっとイタい男の子。
それが、岡部倫太郎なのです。


そんなわけで、いい最終回でした。
途中の時間配分でときどき不満はあったけど、アニメならではの魅力満載のいい作りだったと思います。
ゲームファンとしてもほぼ満足なデキだったかな。
全24話、か。なんとか感想を完走できたね。はぁつかれた。


んー。でも(終)マークがなかったな。来週なんか特番でもやるのかな?
ま、いいや。そうだったらそのときにまた。


それでは、スタッフの皆さんおもしろいアニメをありがとうございました。
次回作もどきどきわくわくの傑作を期待していますです。

*1:バッヂを渡してラボメンだとは言っていても彼女に心を許してはいない