あれよあれよという間に、ハーフプライサー同好会へ入部させられてしまった佐藤洋と白粉花は、弁当争奪戦におけるルールや心構えのレクチャーを部長の槍水仙より受けることとなる。そこで知った戦場の真実は、彼ら二人に大きな驚きを与え、これから赴く死地への覚悟を新たにするきっかけともなった。
そこに誇りと礼儀があるか否か。
たとえどれだけの膂力をその身に宿していようとも、誇り無く力を使えばただの見苦しく暴れ回るだけの肉の塊だ。
いかほどの英知を両の眼に光らせていたとしても、そこに礼儀がなければ無頼の輩といささかの違いもない。
そう、我々は狼。
「勝てばいい」などと浅ましい思考はついぞ持ち合わせてはいない。
生きるために必要な糧だけを狩る。
食材そのものに、農家や漁師のおじさんに、それを運ぶトラックのお兄さんに、お弁当を作るパートのおばちゃんに、できた弁当を並べるフリーターのお姉ちゃんに、そして、半額シールを貼る半額神と、自分と戦い破れた者たちへの感謝と敬意の気持ちと、今日も生き残り食事ができたことへの喜びをこめて ──
いただきます!
と、言って食べるのだ。
それこそが、狼の矜持。
△▼△
茶髪・坊主・あごひげ・ウィザード。
戦場で相見えればいずれ劣らぬ猛者でありハーフプライサーなれど、ひとたびそこを離れれば普通の気のいい若者ばかり。
彼らは、昨日、死闘を繰り広げて食料を奪い合ったことなどウソのように、後腐れもわだかまりもなく笑い会うことのできる、よきライバルたちなのです。
きっとそこに誇りがあるからなのでしょうね。
そんな彼らがもっとも嫌うものは、半額弁当を手に入れるためなら手段を選ばない卑怯な豚たちです。
たとえば、まだシールを貼ってもいない弁当を大量に確保した上で、半額神に詰め寄り今すぐシールを貼れと脅しをかける恰幅のいいおばさんの『大猪』や、その巨体と数にものを言わせて自分が食べる以上の弁当まで根こそぎ奪っていこうとする『あらし』と呼ばれる大学ラグビー部の面々。
しかし、奴らは卑怯な豚たちと蔑まれる存在ではあっても、百戦錬磨の狼たちが“天災”として対決を避けようとするほどに強力な存在でもあります。
なのに、それでも、佐藤は引き下がりません。未だ狼たちから“犬”としか扱われていないデビューしたてのよちよち歩きの彼が。あるいは、だからこそか。
ウィザードの「いいのか?」の問いかけに、佐藤はいまここで引いたら自分はこれからも犬のままであることを悟ったのです。
一方、ここにいてもいいことはない、と一度は戦場をあとにした狼の先輩たちも、よちよち歩きの佐藤一人にいいかっこをさせておくわけにいくものか! と、『大猪』と『あらし』の跋扈する割に合わない戦場に舞い戻り戦いに参加します。そして、勝利。
勝ちどきを上げる暇すら惜しいとばかりに、言葉一つ交わすこともなく、狼は狼との戦いを始めます。
ウォーミングアップの豚退治のあとは、狼同士の誇りある戦いというわけなのでしょう。
佐藤は、いま、誰もが認める狼として生まれ変わり、初の勝利をもぎ取ることに成功したのでした。
彼が生まれて初めて自分の力で奪い取った食料は、月桂樹を冠したサバの味噌煮弁当でした。
月桂樹の半額シール ── それは、半額神が残った弁当の中で一番質がいいと押した太鼓判そのもの。
彼は、誰もが狙い、手中に収めればその日の勝者が決する程の伝説の弁当を、初の勝利で手にしたことになります。
△▼△
うん、バカだ。
だが、それがいい。真剣にやるバカこそ燃えるものはない。そう思うのです。
なるほどね、戦場はいくつもあるし、個性的な敵キャラ・味方キャラ・半額神等々、簡単には飽きさせない作りだよ、ってところですか。わたしの心配など杞憂にしかすぎなかったようですね。
あ、そうそう。今回はこのシーンがよかった。
一つのカップ麺を一口ずつ回して交代に食べていくところね。
こういうのって、青春じゃないですか!!
ただでさえ潔癖症っぽい白粉さんがこれやってるんですよ。二重に青春じゃないですか!!
開始前から密かに期待してたベン・トーですが、二話目にして評価は急上昇しました。
このままハイテンションを保って最後まで突っ走ってくれることを望みます。
では、また。