楓の弟の香にのりえはご執心であった。ことあるごとに構い、話しかけ、何かの拍子に持ち帰ってしまうのではないかとまわりに思わせるほどのハイテンションさに、友達一同はしばしばどん引きする毎日だった。
そんな折、彼女は香の同級生の少女・こまちに、スイーツ作り勝負を挑まれた。どこから見ても頭の軽そうな女子高生ののりえだが、ことスイーツに関してはプロはだしの実力者だ。ふつうの小学生に勝てる相手ではない。勝負は最初から見えているのだが……。



いつもはお調子者で友人の弱みを見つけるとからかいのネタに使うようなのりえも、こと小学生の前ではとっても大人でした。
のりえの腕をあなどったばかりか本人にはろくに料理の経験もないというのに、勢いで無策に自分からふっかけた勝負におろおろするだけのこまち。それを見てものりえは何も言わない。あげく、楓の祖母に助け船を出してもらってホットケーキ作りに取りかかったこまちを見て、やさしく笑みすら浮かべて何も言わずに黙って見守る余裕まである。


力の余裕は心の余裕なんですね。
強い人こそ弱い人に対して優しくなれるものなんですよね。
いままで見たことのなかったような、のりえのやさしい視線がいたく気に入りましたよ。




まず、食べてくれる人の笑顔が見たいと思うこと。それがお菓子に限らず料理作りには大切だと思うんです。
精神論じゃないですよ。誰かのためにって思うことは、より真剣に物事に取り組むことだから。真剣に取り組んだことならば手遊びにやることよりも必ずいい結果を生むものだから。


特に、甘いものを食べたいと思うときはみんな癒やされたいと思っているはずだもの。
優しい気持ちに触れたい、なりたいって思っているはずだもの。


甘さは優しさに転じ、優しさは技術を向上させ、技術とはすなわち力である。


誰かのためにがんばる人がわたしは大好きです。




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例によっていらいら前半ほわほわ後半の絶妙な構成が続きます。
『たまゆら』ってとにかくオーバーアクションなキャラクターばかりだから、そのへん好き嫌いが分かれる作品かも、と思うんですよね。かく言うわたしも本来はかなり苦手なタイプ、なので。


すべて後半の「いい話」の作りで勝ってる感じだなぁ。


はい。
そゆことで、来週も楽しみにしておりますです。
では。