妖精さんの作り出した『同類誌』に放り込まれた<わたし>と<助手さん>と<Y>は、試行錯誤を繰り返して、ようやくこの世界のルールを把握します。要は、自分たちがマンガの登場人物となってドラマティックな展開でコマ*1を動かし、同じように本の中に捕らわれた別のグループと競い合いながら、一本の作品を完成させればいいのです。
そして、ここから脱出するためのゴールは二つに一つです。
- 人気作として妥当なオチをつけてマンガを完成させること
- 人気ランキング最下位に落ちて内気に憂き目に遭うこと
ただし、打ち切られた場合は……漫画家はつぶしがききませんよ。
とりあえず、今回は次から次へと耳に飛び込んでくる特殊な用語の数々に翻弄されてばかりです。さすがに『オノマトペ』や『集中線』くらいは一般知識として持っていたものの、『ピコ手』とか『非電源ゲーム』のような、必要なのか不要なのかちょっと考えてしまう同人用語が実際に存在することに*2びっくりです。まあ、うん、でも、いかにも、って雰囲気なのは確かですね。同人誌を作る人たちが好みそうなノリであることは感じられて、そういった意味では超納得、なのかな。
あ、でもそうだ。
『いたこま』? って聞こえたアレはなんだろう?
検索してもそれらしいものが出てこないのですよね。となると聞き間違いなのかなぁ。
『イタコナ』はヒットするんですよ。かといって、こっちは文脈から外れすぎてるような。
用語の他にも、
「欄外は編集の領土」
「引きに始まり引きに終わる」
「文脈などいらないんだなこれが」
「プロ意識が失せると下書きを誌面に載せるようになる」
「30過ぎてマンガ家を続けられなくなっても公務員を目指すには遅い」
等々の名言がぽんぽん飛び出してきて、そのたびに膝を打ったり小さくうなり声を上げてしまったり深く心に響き腕組みをしながら頷くほかなかったり、なんてことはないわけですが、とてもステキな皮肉の連発には心底感嘆したのは事実です。
何より『よく練られた重厚な話は受け入れられにくく、勢いだけの軽薄な話は飽きられやすい』ここかな。
昨今の深夜アニメがまさにこれなのでしょう。
1クールという短期間に可愛い女の子を歌って踊らせ笑わせ泣かせ広げた風呂敷もたたまず中身が全くないことに気づかれる前に終わらせてBD買ってね♪
……という、アタリショックを自ら再現しようと日夜研鑽に励んでいるとしか思えない現状を、鋭くえぐった問題作が『人類は衰退しました』なのです。BD買ってね♪
いいかげん、BDが売れないとどれだけの名作でも闇に葬られてしまうようなビジネスモデルは、何とかすべき時期に来ていると思うのです。
がんばってそうしてください。はい。
そんなわけで、インパクトの強さは香辛料なわけですね。
あれだけ世間を騒がせたハバネロなんて、いまや子供でも恐れることのない凡庸な刺激物でしかないのです。
強い刺激にはみんなすぐに慣れて、飽きちゃうのですね。だけど塩やこしょうは、もちろん人体に必須であるという実用面もありますが、それを除いても誰も飽きたりせず*3に好まれ続ける味。
何事も適度にですねぇ。
ん。そんなわけで<わたし>の初めての本の売れ行きは4部でした。
なんか、いいですね、すっごく。ここ、気に入りました。同人活動には全く無縁のはずなのに、光景が想像できるような。
では、また来週。