自分に対する佳奈多の執拗な嫌がらせに葉留佳の憎しみは増すばかりだったが、それは決して佳奈多の本意ではないと知った理樹は、いまこそ二人が充分に向き合って話し合うべきだと諭す。しかし、佳奈多を恨むことで自分を支えてきた葉留佳にとって、佳奈多を認めることは自分のすべてを失うに等しい究極の決断だ。悩みうろたえる彼女に、理樹は答えはキミの心のなかにある、と優しく微笑む。その笑顔は葉留佳にとってどれだけの励みになったことだろう。
自分のしたかったことは誰かを憎むことではない。それに気がついた葉留佳は佳奈多と和解する道を選ぶのだった。
憎む対象がいないというのは苦しいものです。誰も憎んではいけない。口で言うことは簡単です。だけど、誰もが自分がいまこうなのは他の誰かのせいなのだ、そう多かれ少なかれ心の片隅で信じながら、自分を支えて生きているのでしょう。
ですが……誰もがそうしている程度のことならともかく、憎しみにとらわれて自分を支えるどころか縛り付けるようになっては、本末転倒というものです。
さて。
恭介のアドバイスはいつでも的確です。
彼曰く、理樹にできることは、葉留佳が本当にのぞんでいることを自分で見つけなければならないと、伝えること。それだけ。
決して彼女の望みをかなえることではないのです。
人は人を救えないと言った佳奈多の言葉がオーバーラップされるいいシーンだったと思います。
葉留佳は一人で考え、そして決断しました。
憎しみを捨てて佳奈多とと話し合うことを
それがどれだけ勇気のある決断か。心の強さを示すものか。
冒頭で述べたように、憎しみの心とは自分の一部に他ならないものなのです。まさに身を削る思い、なのでしょう。
しかし佳奈多は頑なでした。
真実を教えてくれと頭を下げて乞う妹に、知りたければ土下座をしろと冷たく言い放つのです。
ただしそれは、心を決めた葉留佳にとってなんの障害にもなりません。
一瞬のためらいも見せずに地面に額をこすりつけんばかりに土下座をしてみせる。これは卑屈でも媚びでもありません。力強さです。ひるむ佳奈多。
「自分を要らないと思うのも誰かを憎むこともやめたい。だからお願い。話して」
そんな妹の姿を見てなお冷静でいられるほど、佳奈多は強くはありませんでした。
彼女の口から語られるすべて。
自分を守るために葉留佳を傷つけてきた。
葉留佳を守るために葉留佳を傷つけなければならなかった。
自分の大切な妹、葉留佳。
でも、一方では、自分だけが不幸だと思いこみ無邪気に自分を憎んでくる葉留佳に対し、激しい憤りもあったことでしょう。お前を守るために自分がどれだけ苦しい目に遭っているか知っているのか……そう、言ってやりたくても言えなかった気持ちも絶対にあったと思うんです。葉留佳につらくあたっていたのはそうしなければ本家の魔手が彼女にも及ぶからだけではなかったと思うんです。
それを、此の期に及んでも一切口にしない佳奈多の思いやりと、同時に存在する、嫌な言い方になりますが保身の気持ちが、とても人間らしくてわたしは好きですね。
結局、どちらが“犯罪者”の娘なのか、それはわからずじまいでした。
そう、あくまでも括弧付きの犯罪者。二人の娘を守るために刑務所に入ることもいとわなかった父を持ったことを、葉留佳も佳奈多も誇りこそすれ蔑むことは今後一切なくなるでしょう。
一人の母と二人の父。その間に生まれた二人の娘
端から見れば恐ろしくゆがんだ呪わしい家族関係だけれども、きっと今後の彼らは……幸せな関係を築けるといいですね。
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うん、あと一週欲しかった気はします。やはりどうしても駆け足感は否めないんですよね。これはこれで及第点以上のいいデキだと思うんです。いや、かなり良くできているんでしょう。それでもあと一歩と思ってしまうのは、やはり原作の大ファンだからなのでしょうね。
さて、クド?
……できるの、アレ。
そういえば次回で19話か。最終回に向けて突っ走りはじめる頃ですよね。
ま、期待して待っていましょう。