ネトゲ部の文化祭展示としてのLA攻城戦勝利のために、一同は対人最強ギルド<バレンシュタイン>との同盟を結ぶ事に成功する。
しかしそれは、バレンシュタインによる罠 ── 彼らにとっては単なる一つの余興のため ── だった。ネトゲ部のギルド<アレイキャッツ>に協力し、小さな砦を彼らのものとした瞬間に裏切りを働き、砦もバレンシュタインのものとする。
そこまで考えての“同盟”だったのだ
いやしかし、みんな冷静ですよね。
見事なまでに裏切られて騙されて殺されて、それでも平然としてるんだもの。
これが今の子たちなんですかねえ。
わたしだったらもうブチ切れて悪口雑言並べ立てて……それこそ連中の思い通りか。
猫姫さんがかろうじて教師としてのショックを受けていてくれたところに少しだけ感銘を受けました。
そうも感じたけどさ、でもね、ルシアンたちって、いつだって前向きなんだよね。
騙されてショックじゃない筈がないんだよ。
裏切られて傷つかないはずないんだよ。
自分を裏切った相手と握手をした右手が、腹立たしく恥ずかしく悔しくないはずがない。
とっても怖いけど、また、誰かと縁を結ぶために右手を差し出すんだよ。
それが、アレイキャッツのみんななんだ。
ゲームは楽しむためにやるもの。
勝敗やそこまでのやりとりの中で、結果的に誰かを傷つけることはあっても仕方がないかもしれない。
が。
目的がそれだったりするのって、悲しいよね。
かくして、猫姫親衛隊とTMWの助力を得て、文化祭前の最後の攻城戦に挑まんとするアレイキャッツの面々なのでした。
どうでもいいけど、依頼人を裏切る傭兵団なんてすぐ仕事なくなりますよねぇ?
△▼△
以下はわたしの乏しい対人経験から得たネトゲ論です。
読み飛ばしてもらって構いません。
身も蓋もない。
MMORPGの対人戦はたいていそんなものです。
対人最強ギルドと謳われるバレンシュタインと事を構えることになったネトゲ部ギルドのアレイキャッツも、その言葉通りに一瞬で蹴散らされることになりました。
そもそも、MMORPGにおける対人スキルはいわゆる『プレイヤースキル』のみならず*1、大型の強力なモンスターと戦う能力を犠牲にすることで調整している小技に特化した*2『キャラクタースキル(ステータス)』が加わることで、慣れた人間には初心者は絶対にかなわない図式が完成します。
そして、対人スキルの強い連中は、決して低くない確率で性格がねじ曲がっています。
戦って勝つ。強かったから勝った。勝ったからうれしい。
そこまではいいでしょう。当然でしょう、わかります。
でも連中はそれで収まりません。
「対人さえ強ければなにをやってもいい」
思い上がりも甚だしい勘違い丸出し……のように見えて、その実、半分はその通りであることは否めないんですよね。そういうルールの世界なわけですから。
UltimaOnlineと言うゲームをご存じでしょうか。
プレイしたことはなくても名前くらいは知ってる人は多いでしょう。
このゲームはまさにそれが原因で滅んだゲームです*3。
あまりに人殺しや泥棒、詐欺師が蔓延したために、今まで通りのやり放題世界と、他キャラクターへのネガティブアクションを禁止した新しい世界を作って棲み分けることで、とりあえずの延命を図ったゲームです。
旧世界*4でやりすぎた(自覚のない)連中は口を揃えてこう言います。
「悪人のいない世界なんてリアルじゃないだろ」
なるほど、それはその通り。
ただ、彼らは大きな勘違いをしているんです。
「悪人しかいない世界のどこがリアルだ」
わたしはそう言いたい。
NPC以外誰も信用できないんですよ、ホント。
そこまでひどいことになったんです。今も昔もどんな分野でもやりすぎれば規制が入るのが世の常です。
『悪人もいる、善人もいる、リアルな世界』だったはずのUOは、どんどんプレイヤー人口は減り、いまや誰の助けも借りずに一人で遊べる普通の過疎ネトゲとなってこの世界の片隅で細々と続いているのです。
いつかどこかでこれ言いたかったんですよね。
ちょうどいい機会だったので。はい。