昔から、他人のために怪我ばかりしているこはねを、ずっと宇希は心配していました。
やっと自分のやりたいことを見つけることのできたこはねを見て、宇希は安心していました。がんばれ、こはね。チアリーディングいいじゃない。
私には恥ずかしくてできないけど。やりたいけど、恥ずかしいから無理だけど。
だから、勧誘しないでよ、イヤだってば。そんな短いスカートぜったいありえないってば。
え、ズボンもある?いや、でもやっぱり、どうせならスカートで……。
- (アキレス腱を伸ばしながら)段ボールにリボンを20回ほど巻いて
- (開脚しつつ)そっとほどいて中心をくくる
- 開かずに両端を切る
- (かけ声をかけながら)できたら中心からひねって広げる
はじめてのポンポンのできあがり!
さて。
いよいよ、チア同好会の活動が開始されました。
やる気だけは充分。だけど、運動神経は壊滅的なこはねの指導には、ひづめも四苦八苦しています。
でも、再びチアの世界に戻れた彼女にとって、誰かと一緒に誰かを応援したい彼女にとって、それすらもが、喜びの一部になっているのかもしれません。
ひづめは経験者の中でもさらにトッププレイヤーでした。
当然のことながら才能にも恵まれていますし、それに見合った努力も怠らなかったからこそ得られた地位に違いないです。
そんな彼女からすれば、まずは体力作り、基礎練習。
それが固まってからようやく演技へと入るのが常道であり、最終的には上達の近道になると知っているはずです。
だけど、形から入るのって、いけないことなのでしょうか?
カッコいい姿に憧れたから始めたのに、それとはほど遠い泥臭い練習ばかりでは、いやになってしまうのではないでしょうか。
甘え。
ある意味、そうかもしれません。
でも、今って、苦しみから入る時代じゃないですよね。楽しみから入る時代ですよね。
どこかに弟子入りしてみたものの、下積みと言われ雑用ばかり何年もやらされて、10年経っても技術的には素人同然のまま。
という時代は、もう終わりにすべきです。
ひづめも気づきます。
そうだ、自分もチアのカッコいい姿に憧れて、基礎もないのに鏡の前で演技を真似していたことがあった。
こはねだって、同じなんだ。
そして、なにより。
このまま退屈な練習ばかりさせて、チア同好会から抜けられたらまたひとりぼっちになってしまう!
いいですね。やっぱりそういう自分の都合でも動かないと。
いくらチアってもね、他人のことばかりじゃなくてね。
そんなわけで、ひづめのキレッキレの演技を目にした宇希も、正式に同好会に参加することになります。
主にこはねのお守りを任せるために、ひづめは彼女を熱烈歓迎するのでした。
……うん、ひづめってけっこう自分本位よね。好きだわ。